4
「じゃ、ミヤ今度こそ任せるからね」
「ちゃんと教えてあげるのよ」
自分たちはトレーニングをするからとケイとメイが立ち去るのを私は夢ともうつつとも
付かないままで聞いていたが
やがて私の耳、いや私の頭の中、心の中にミヤの囁きが滑り込んできて
なおミヤが止めない私への愛撫の快感とあいまって
私は頭の中の言葉を心に刻み付けていた
「…毎日眼鏡を掛けなきゃだめですよ?」
「できるだけ…毎日少しでもここに来て…」
「一人っきりになったらね眼鏡を掛けて『honey bee』って…ね?これが魔法の言葉です」
「眼鏡を掛けないとここにたどり着けませんから…ね?」
「お姉さんの背中に羽根が生えたら…もう私たちと同じです、それまで我慢ですよ?」
「感じちゃうのは…身体のせいですから、あまり気にしないで」
あとは
「お姉さん、大好き、大好き、大好きです」
ミヤのそんな囁きが繰り返されて
陶然となったまま私は、最後にミヤの長い長い口付けを受けていた
そのあと
どうやって外に出たのか
何処をどう歩いたのか
全く憶えていないのだけれど
私は気が付くと元の姿で自宅の前に立っていた
あれほど衝撃的なことがあったのに
”家族”とかわす表情も言葉も私の表面を過ぎるだけ
もしかしたら私は眼鏡ではなく仮面のほうを掛けているのではないかしら
いや、これは別に今日に限った感想ではないけれど
いつものように”家族”との接触をにこやかに、けれど最小限で済ませると
私は自室に引き上げた
奇妙に聞こえるかもしれないけれど
その日再びミヤがいう『魔法の言葉』(キーワードをミヤらしく表現したのだろう)を唱えて
着替えもせず文字通り変身してしまったことよりも
変身してしまった身体を確かめるうち皮膚感覚の気持ちよさにひかれて
そんなことに淡白なはずの私が一人でしてしまったことよりも
その日次々と起こった出来事に頭のどこかが麻痺しているようで
全く動揺していないことのほうが私には不思議で仕方がなかった
『洗脳』
そんな恐ろしい言葉が浮かんで私の頭から離れない
私の身体にこれ位の事を起こせるのならきっとそれくらいされてしまっているかもしれない
けれど
その恐怖さえもどこか麻酔をされているような私の心はそれに反応することも
”家族”に話す事さえしないでそのまま私は眠りに付いてしまった
そう私に寄り添うミヤの気配を心のどこかで感じながら
そして翌日
下校する時私はそれまでの眼鏡を昨日の眼鏡に掛け替えてみた
昨日のように圧迫感のあるものではないけれど
頭の中で案内がされるようで私は迷うことも無く例のビルにたどり着いた
「お帰りなさい、お姉さんっ」
どこかで期待していたように部屋に入るとミヤが飛びついてきた
ミヤの笑顔もさることながら
ミヤが私にぶつけてくる混じりけの無い『好意』
普段なら暑苦しいとさえ思えるかもしれないそんな感情も
なぜだかミヤから向けられると心地よく微笑ましい
「こんにちわ…えと…その、ミヤ…」
「お姉さんっ、わたしわたしお姉さんが来てくれるかどうか心配で…」
互いに少しはにかんで見詰め合う私たちを
「はいはい、仲がよくって結構 でも入り口は開けて欲しいな」と
私の後から入ってきたケイがミヤと私を両抱きにする
顔を赤らめる私とミヤにすぐその後に入ってきたメイが
「ねーえ、ケイお暑い二人は放って置いてトレーニングしましょ組み手の相手がいないとね」
と声を掛ける メイにしても口調ははすに構えているが
二人が私には好意をそして更にミヤにいたわるような感情を持っているのは今日ははっきりと判った
「はいはい、お邪魔虫は消えようか、じゃミヤ、お気に入りのお姉さんのお世話は任せたよ」
「は、はい頑張ります」
ケイ達がラウンジから出て行くとミヤはわたしを昨日とは違う小部屋に案内した
聞けばここはミヤの私室にあたる部屋だという
八角形に作られた部屋だが不思議と落ち付くのはなぜだろう
ミヤは私と向かい合うと
「お姉さん、変身してみましたか?」と聞いてきた
「ええ」そう答えると
「じゃ、じゃ変身して見せてください」といってくる
いまさら隠すことでもないし、私はミヤの目の前で変身をして見せた
「嬉しいなお姉さんが少しこちらに近づいてくれたって気がします、それに」
「それに?」
「お姉さんのは綺麗な青ですね、深い深い海の色みたい」
「え?」何の事を言っているのか判らない私に
「髪の色です、ほらミヤは金色、ケイさんは栗色、メイさんは緑でしょ?
みんな違う色になるみたいです」
ミヤに言われて鏡を覗く私
そしてその後ろからミヤが私を抱きしめる
「お姉さん大好き」
ミヤの声はかすれて少し湿りを帯びているように聞こえる
「どうして好きなの?」
「理由なんて、理由なんてありませんお姉さんをはじめてみた時から大好きです」
「そんなに好いてもらえるのが不思議」
「意地悪言っちゃ嫌です」と少しミヤがすねてみせる
そんなつもりは全くないのだがミヤがそういうからには私は意地悪なのかもしれない
私がミヤを拒む様子が無いことがミヤを大胆にさせたのだろうか
今日は私がミヤから口付けを受けることになった
そのまま部屋の方脇に置かれた寝台にもつれて
「きのう…あの、変身した後…そのぅ」
「私が何かしたかって言うこと?」
「は、はい」
「何故聞くのかしら」
ミヤは紅くなって口ごもってしまう
『ミヤ、貴女のお部屋で私にどんなお世話をしてくれるつもりだったの?
どうして、ケイさんとメイさんは席をはずしたの?』
とそう聞いてもよかったのだけれど答えはミヤの様子でわかったような気もする
だから私はミヤのするままに流されて見る気になる
今日のミヤは昨日より落ち着いているようでやはり切なそうに息を弾ませてはいるが
何とか私を高みにまで導くことに成功すると
ようやく安心したのだろうか私をぎゅっと抱きしめると
私に体を摺り寄せながら小さな頂きを何度も何度も迎えているようだった
と、そんな風に話すと私がひどく冷静でいるように聞こえるかもしれないが
私はたった一度迎えた頂の上からなかなか降りてくることができず
ぼんやりとした頭の中にミヤの囁きをまた吹き込まれながら
ミヤの囁きを心に刻み込んでいた
「体が変われば心も変わります、私たちと同じになれます」
「自分で考えて動くことはできるけれど”姫様”のことを大切に思えるようになりますから」
「眼鏡の中にね私達の心と身体を作り変えてくれるちいさいちいさい機械が入っているの」
「大体みんな5回か6回ここにきたら羽根が生えるんですそうしたら…」
「このビルの中にいると小さな機械が元気よく動くんですって」
「いまあんまり怖いとか思わないでしょ?それは機械が心を作り変えてくれてるからです」
私にしがみついたままでいるミヤに今度は私のほうが質問をしてみる気になった
「”姫様”って誰?何処にいるの?」
「”姫様”は”姫様”としかいいようが無いです、でも優しい素敵な人ですよ
お姉さんにも早く合わせてあげたいけど、今お留守なんですヨーロッパに会議に行くって…」
「優しいかどうかはともかくミヤたちのご主人様なのね?」
「そんな人じゃないです!」とミヤは珍しく強く言ったが
「でも、さっき言ってたでしょ?『大切に思えるようになる』
それから『小さな機械が心と身体を…』って」
「え、は、はい」
「どのみち私もそんな風に変えられちゃうんだから優しくても怖くても関係ないわよね?」
「そ、そんな…」
「どうせここに来てしまったんだから、引き返せないんでしょ?
せめてミヤ達がいい感じの人でよかったと思うことにするわ」
「…そ、そうですね…ええ、そ、そうです」
私の胸に顔を埋めてぎゅうっと抱きついていたので
ミヤの表情は見えないがミヤから伝わってくるのはここに来て初めてミヤが見せる暗さだった
5
その日は結局ケイ達には会わず私はそのまま帰ったのだけれど
ミヤから感じたものが気に掛かってやはり次の日も私はビルを訪れた
今日のミヤはどんな表情を見せてくれるのだろう?
けれど
「や!」と声をかけたのはケイ
そして横で何か書見をしていたメイがにこりと笑みを投げてよこす
「今日は…」
「ミヤから聞いた、変身出来るようになってたんだって?」
「早いわね」
「そう…なの?」
「ああ、ミヤのお世話がよかったかな?」
「あ、あの…ミヤは?」
「ん、気になる? きっとミヤが喜ぶな、大好きなお姉さんに気にかけてもらって」
「うふふぅホントね」本を脇においてメイも話しに加わってくる様子だ
「い、いえ、気になったから…」
「ミヤのこと、かな?」
「はい」
「そんな他人行儀でなくていいわ、私達の間ではミヤも含めて上下関係ってないの」
「いずれ組織に組み込まれるからって事?」
「なになに、随分かりかりしてるね…ひょっとして昨日何かあった?」
「あったって程の事は」
「でもねミヤの悪い癖が出ちゃってるのよね」
「メイ!」
「いいじゃない、いずれ判るし、ミヤが慕ってるんだから、知っていて貰った方がいいわ」
「だね、判った」
「え、一体なにが」
「ん、ミヤはね 洗脳機に掛かってる」
「だって、もう体が完全になったら自然にってミヤが、それともそんなに徹底的に?」
「違うのよ、ケイ 見てもらうほうが早くない?」
メイに促され私たちはケイの先導で最初に着替えをした部屋に続く通路を進み
どこか物々しい印象を与える扉を開いた
そこには曲線を多用したデザインの用途もわからない機械類が雑然と置かれているが
その奥に細長い卵型のカプセルが置かれていて
透明なカプセルの中にはミヤが頭部にコードのようなものをつけて横たわっている
ミヤの表情はとろりと溶けて
洗脳機に掛かっているのだと先ほど言われていなければ
幼い子供がお気に入りのぬいぐるみに囲まれて安らいでいる、そんな表情にもふと見えた
とろりとした表情のままミヤは何かをつぶやいているようだがカプセルの中の音は聞こえてこない
実際にこの眼で仰々しい機械を見てしまうとやはり少し恐ろしく
それにミヤ達が私に向けてくれる好意まで強制された作り物では?
そんなことも心をよぎる
「聞いてみる?ミヤが何言ってるのか」とメイがなにやらカプセルの操作をすると
スピーカーからミヤの呟きが漏れてきた
『お姉さん、好き好きです…お、お姉さん…すき好き、あ、ああ、お姉さん。あっ…』
ミヤがカプセルの中で大きく身を弾ませた
「やれやれ、今の部分ってホントなら組織に対する忠誠を刷り込まれるとこだよ」
「別の事してるようにしか思えないわね」
「”姫様”ミヤには甘いってかもう本当に止めさせたほうがって思うわね」
「でもここのとこ悪い癖は出てなかったし」
「ええ、それにお姉さんが来てくれたって喜んでたからしばらくないかなって思ったけど
昨日あなたが帰ってから、こっそりこれに入ったみたい」
「で、今日は来るなりこれ使ってたんだよなぁ」
「ミヤはねこれが止められないんだ」
「私たちは掛かった事なんかないんだけど」メイがやれやれと肩をすくめて見せる
彼女たちによればミヤだけが姫様とやらにお願いして
不安定になりそうだからと自らこれに掛かっているのだという
では元々何のためにこれがここにあるのかと私が聞くと
「これはね『下』に置いてあるの、下に行った人はさ、これに掛かって貰うわけ」
「それでお帰り頂くのよね」
「ああ、ミヤが下に言っちゃだめって言ってた『下』ってそれなのね」
「そう、そう言うこと」とケイ
「どうして帰らせるのか判る?」とメイは少し意地悪そうな笑顔を送るが私を試す気のようだ
「人が消えるとおおごとになる、それにこの機械で必要な暗示とかできて
後は必要な時だけ自由にできるのかしら、だったら普段は普通に過ごしていてもらうほうが
安上がりってことかしら?」
少し考えて私が返すとケイとメイは顔を見合わせ
「いやミヤの大ヒットだね」
「ほんと『下』なんかに行ってもらっちゃ困るわ」と嬉しげに笑顔をよこす
「問題はさこれに掛けちゃうとお呼び出しした時にはね、意思をなくしちゃうわけ
そうなるとパートに来てもらうには労働力としては重宝するんだけど
作戦を展開しようって事になると作戦の自由度が取れなくなるのさ」
「で、私たちと意識や感情のどこかを共有できて、自分の意志で動いてくれるそんな人材は貴重なの」
「なるほど、だから問答無用で変身させてついでに気持ちよくして
仲間に引き吊り込むのね、昨日もミヤに言ったけどなかなか卑怯なシステムね
どの道選択の余地なんてないのに仲間ごっこで気を紛らせてくれる」
「まあ、”姫様”が参加してるのが世間で言う”悪の組織”って奴だから…ん?
いまなんてった?」
「私も聞き捨てにできないことを聞いた気がするわよ」
「卑怯なシステムって言った事?」
「いやそれじゃなくって」
「その先よその先」
「選択の余地がないのに…」
「そうそう、それ」
「それよそれ」
「だってそうじゃないの?洗脳だってされかかってて、体はもう作りかえられてるんでしょ?
誰に言う気もなくなってるけどこれも洗脳のおかげ?
後戻りできなくって、どうやら先に待ってるらしい仲間とのつながりを期待させる
あなた達のこと私も好きだって思う
でも、所詮は作られた状況だって思うわよ、少しがっかりするわ」
「うー、できるって聞いてない?」
「ええ、望むならいつだってできるわよ完全になる前なら。でもそれを聞いてない?」
「できるって何?聞いてないわ…」
愕然と顔を見合す二人、そして今ひとつ二人の困惑を理解できない私
互いに戸惑う私達の耳に
『…ごめんなさい…ごめんなさい、お姉さん…』
ミヤの夢うつつのつぶやきがスピーカーから聞こえてきた
「メイひょっとして」
「らしいわね、で、これにこもってるってことね」
「ミヤはまだしばらくここから出せないだろ、とりあえずラウンジに戻ろうか」
ケイの表情は今まで見たことが無いほど厳しい
ラウンジに戻るとケイは
「ともかく、眼鏡をはずしてくれない? まだ間に合うから」と有無を言わさない表情で言ってくる
「そのほうがいいわね」とメイも頷く
無言で眼鏡をはずした私は二人に促されともかくも席に付いた
「この際だから説明しなおすよ
眼鏡をね、ああ、あの医院も下で調整された人ばっかりになってるんだけど
あれを掛けるとねともかくここに呼びつけられるの
これは姫様がやってる人員確保と組織作りの一環なんだけどね
そこで私達みたく洗脳を受けてそれでも意志をもって動けるものと
そうでないものに区別をしてるってことなの
で、これも姫様の方針なんだけど
最終的にこの身体になる人はさ参加するのかどうか自由意志で選んでくれる人でないと
駄目って事なのさ ごめんも少し聞いてね
だからこのことは最初に説明するのがルールなの
そうさ、眼鏡をね壊せばいいの
ぼっきり折ってしまえば眼鏡は溶けてなくなるし
身体もね完全になる前ならひと月ほどで元に戻るよ
そのうちここでの事も忘れてしまえるから
こっちもそっちにも安心てことだね」
「誤解があったってことらしいわね?」
「そうそれも意図的な」
「ミヤ…なんてこと」
「で、どうするのかしら?」
「姫様がいたら…厳罰だね、最悪は処刑」
「処刑?」
「ああ、それくらいメンバーのチョイスは重要なのさ、それだけに惜しいんだけど
だから一度考え直してみてくれないかな?
このままだと後1回か2回ここにくればナノマシンが活性化されて
完全に私たちみたくなるから」
「あは、ミヤが言ってたわ小さな機械って
ね、ミヤの処刑は待ってくれないかしら?」
「どいうこと?」
「考えた結果次第って事 確かに勝手なことはしたのかも でも…」
「あらあらお姉さんまでミヤに引っ張りまわされそうね?」
「私たち同様ってことかな?」
「そうかもね、で身体はどうなるの?ここにこない間に元に戻るのかしら?」
「一人でいる時に眼鏡を掛けていればいいわ、一日一度掛け続けていれば後戻りはしない」
メイがそう言ってよこす
「さて、処刑はともかく厳罰はしておかないとね」
ケイの真剣な表情はいつもの漂々とした様子にはまだ戻らない
「え?」
「姫様のことだから厳罰に処して置きましたって言っておけば処刑まではって思うのさ
でも放置はできない。さて、申し訳無いけどそろそろミヤが機械から出てくるんで
今日はこれで帰ってもらえる?後は私たちに任せてよ」
無言で頷いた私は先程の部屋に向かうケイを見送り
残ったメイに送り出されることになった
「メイさん?」
「メイでいいのに。何かしら?」
「ミヤはどうなるのやっぱり叩かれるとかするのかしら?」
「気に…なるのね?」
「ええ」
「私たちってほらもう改造されちゃってるでしょ?」
「そ、そうね」
「ふふ、だから少々殴るくらいじゃ堪えないのよ」
「えっ!」私の脳裏に冷たい物が走る
「あはっ。違うの、うふふ、も少し待っていて」
「ええ」
「でもその間に…」
私はメイの口付けを受けた
「ケイの代理って事でね」
「へ?」
「ケイがねホントはあなたとこうしたいんだって思うの
あなたが仲間になりそうだってケイが一番楽しみにしてたのよ」
「そうなの」
「だから今のはケイの代理、ね、こんなことになっちゃって本当に残念
でも考えてそれからここにもう一度来てもらえるなら
私もケイも…そうね勿論ミヤも歓迎するわ、だからとりあえずさよならは言わない、ね?」
少し考えてそしてわたしはメイに口付けを返した
「じゃわたしからのを代理でケイに返してくれる?」
「ふっふいいわよ、だけど私の分はどうなるのかしら?」
「あら、ケイからもらいなさいよ」
私たちは数秒無言で見詰め合っていたけれどやがてどちらからともなく
もう一度口付けを交わすと二人ともくすくすと笑いを洩らした
やがて
先程の部屋のほうからミヤの魂ぎるような苦悶とそして絶頂の気配が届いて
ミヤへのお仕置きに参加したほうがよかったかな
そんなことをどこかで考えながら居心地のよい部屋を後にした
6
それから3日の間私はビルを訪れなかった
私がその間何をしていたかはさほど言う必要もないと思う
ただいろいろと自分という生き物について発見があったと言う事で充分だと思うのだ
そして私は再びビルの前に立っている
勿論私の顔には捨てずにいた眼鏡が掛けられている
ラウンジに入ると顔をうなだれさせていた金髪の少女がはっと顔を上げた
「お、お姉さんっ!き、来てくれたんですね わたし、わたしもうお姉さんには…」
「ミヤ、あなたにそう呼ばれるつもりは無いの」
喜びにほころび掛けたミヤの表情がさぁっと曇る
「ご、ごめんなさい、わたし…わたしお姉さんにどうしても私たちと同じになって欲しくって…」
「黙りなさい、ミヤ」
ミヤは慌てて口をつぐむ、ミヤの眼はほとんど恐怖に捉まれているかのようだ
私は無言のままでつかつかとミヤの傍らに歩み寄ると
硬直しているミヤを素早く抱き寄せて
『いいかしら、ミヤ私はねお姉さんじゃないわ、私はアイそう呼んでもらう事に決めたのよ』
そうミヤの耳に囁いてやった
ミヤがその時見せた表情の変化をケイやメイに見せてやりたかった
いやそんな瞬間をケイやメイはそれぞれに持っていて
それでミヤを可愛がっているのではないかしら?
くるくる変わった表情のあと泣きそうになるミヤに
『さ、ミヤのお部屋に連れて行って。 少しわかった気がするの
ね?いい気持ちになると変化が進む、違うかしら?』
ミヤはこくこくと頷いた
『やっぱりね、だったら早く私をアイにするお手伝いをしてくれない?』
真っ赤になったミヤは、けれど私をひしと抱きしめると文字通り飛ぶようにして
彼女の私室に誘った
そこではもう言葉は不要
私はミヤを存分に味わったし
ミヤは懸命に快感に耐えながら私を決して離そうとせず
私たちは通い合う感情を互いへの愛撫の力に変えながら
絡み合った手を指を
するするとすべるもう今はあの生地のようになった皮膚を
そして互いのふくらみを、くびれを
そうして訪れる高みの中で
私の密かなふくらみを包む張り詰めていたレオタードのような皮膚がふつりとほどけ
私の隠された処があふれる蜜とともに弾けて
覆い被さる私の下でミヤのそこも同じように弾けて果肉をさらしていた
混じり合う二人の潤いが密やかな音を立て二人を更に駆り立てていく
ミヤは泣きそうな顔で必死に耐えていたが
私と同様にもう今は嗚咽とも喜びの声とも区別のつかないものを洩らしている
そしてミヤと私はどこか深い所から私たちに降りてくる暗くてそして熱い光に捉えられて
もう動かずに、いや動けずに
互いの密かな泉を重ねて黒い淵に二人で下りていった
『…さん、アイお姉さん』
ミヤが私の耳に熱い囁きをよこして私はやっとこちらに戻る
「アイでいいのに…え?」
「おめでとうアイお姉さん、羽根が生えてます」
後ろ手に新しく備わったものを探ろうとする私をミヤは腕ごと抱きしめて
「駄目です動いちゃ駄目、生えたばかりの羽根が曲がっちゃう」
そう言われて私はミヤの上から降りることも動くこともできず
そのまま身体を重ねていたが、やがてミヤが私の下でするすると動き出し
身体を動かすこともできないままミヤに高みへと再び押し上げられてしまった
抵抗もできない私が
ミヤに散々にされたままでいると
「おめでとー、アイ」
「今度は私に直接ね?アイ」
ケイとメイが先日のように密かに部屋に入ってきていた
「い、何時までこのままにしてないといけないの、で、でないとこのままじゃ、くぅっ」
「とっくの昔に羽根なら乾いて綺麗に展がってるよ」
「一度生えたら生え変わることもあるし別に気にすることもないけど?」
私はきっと私が組み敷いた格好のミヤを睨みつけた
「ミヤ…この嘘つき、またやったのね」
「あ、あはは、お、お姉さん、め、眼が怖いです」
「…ケイ、メイ…お願いできる?」
「もち!」
「お任せね」
今度のお仕置きは参加せずに済ませる気はない私だった
そして私はミヤたちと仲間になった
姫様にお目にかかった私は素直に姫様の優しさを受け入れたが
結局ミヤとは恋人同士にはならなかった
けれど4人での、いや姫様を含めての交流を愉しんでいるのはこれも言う必要もないことだろう
そして何故だかケイ、メイに祭り上げられて4人のリーダー格を勤めさせられているが
損な役回りを背負わされたような気がしてならない
ミヤの悪い癖はまだ時々出ているが私はそれを矯正してはいない
今の私が考えていることは一つ
ミヤを慕ってくれるような可愛いい娘をスカウトすること
そうすればミヤも落ち着いてくれる
そんな気がするのだ
そう私の話を聞いてくれた貴女のような…