デッドエンドスマイル 耐死仕様
きてれつ海月様 作
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「待ってて。準備してくる。」そういって店の裏に消えたましろは、10分もしないうちに戻ってきた。右手には、特大のセロケースを抱えていた。
「な、なんですか? それ? 」
「何って・・・見ての通りのもんだよ。」
 この時点で、マオは悪い予感がした。

 いつ止まるか分からない、いや、止まるときは車体がバラバラになって止まるんだろうと思える、旧式スクーターは走る。
「いいかげん、うちも車買いましょうよ。」
マオはましろのおなかに、ぎゅっと力を入れながら答えた。最新鋭のエンジンを入れている、ということだけど、その甲高いエンジン音が、さらに恐怖を誘った。二人乗りしてるなら・・・。そして、特大のセロケースをつんでいるなら、なおさら。
「何を言ってやがる。マニアが見たらナンボ出すかわからねぇんだぜ? 」
 せきこむようなエンジン音を聞きながら回転数を調整して、ギアを叩き込む。
「確かに、レトロ品としての価値は認めます。だけど、車は雨の日でも乗れますよね。梅雨の季節に入ったら、どうするつもりなんですか? 」
「その場合は、ちょっと早い夏休みを取るよ。」
 いや、このままじゃ一生夏休みでしょ。その言葉を必死で飲み込んでいるうちに、やっとそのお屋敷につく。
 どこまでも続いていそうな塀の向こうに、品のいい和風の建物が見えた。
マオたちは、門の前にバイクを止める。
 インターフォンを鳴らした。ピンポンダッシュのように、呼び鈴を連打するましろを止めて、様子をうかがうことにする。程なくして、和服の品のいい中年の女性が出てきた。
「どうも・・・こんにち・・・。」
「ごんぬずわー。」
 ましろが、思いっきり営業スマイルで礼をした。虎を思わせるキモかわいい目がにへっとゆがみ、狼のようにとがった犬歯がむき出しになる。
 向こうは挨拶を言いかけて言葉が止まった。
 
 中庭を通って、本館の応接間に案内された。なんとなく苦いような空気が漂ってくる畳と、黒檀の机。そこに、依頼人らしい男女が座っていた。
 一人は、和服姿がとっても似合う、ロマンスグレイのナイスミドル。もう一人も、憂いの表情の中に、きりりとした何を感じさせる女の人だった。
 でも、マオがびっくりしたのは・・・。
「愛流先輩? どうしてここに? 」
 しかし、そんな悠長なことを言ってる暇はなかった。
「ごんにぢはー。ぎひっ」
 ましろの営業スマイルが炸裂した瞬間、先輩が血相を変えて叫んだのだ。
「こわっ! でかっ! 」
 ましろは、それでもなお、自称「優しい微笑み」を崩すことは無かった。
 その代わりに、ぶら下げていたセロケースが割れた。そこから、地獄の悪魔でも泣いて詫びを入れるような、重機関銃が出てきた。


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