Rising Red 〜G-fix Get Going!〜
ニシガハチ様 作
scene4.Battle with Spiral Tentacles  4-2
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蛸女は額の管を膨らませ、霧状にした「墨」をG−fixに対して吹き付ける。
その黒い霧は普通の人間にとっては猛毒となるガスで、マスク装着しているG−fixには直接の効果はなかったが、
それでも煙幕としての役目は十分に果たしていた。
一瞬にしてG−fixの視界は黒く遮られ、蛸女の姿を見失ってしまう。

「恵、後ろっ!」

由美子が指示を出すより早く、G−fixの背後に回った「ヘレン」が腕の触手を振るう。
G−fixは不意の攻撃をかわすこともできず、触手が彼女の頬を打つ。

ガッ!

激しい打撃音とともにG−fixの体が地面に叩きつけられる。

(遠距離では触手をかわすだけで精一杯、近づいても煙幕と触手で防がれてしまう……いったい、どうすれば……)

「恵、<スナイパーモード>を使って!あれなら<DU-008>の軟体皮膚を貫くことができるはずよ!」

「しかし……遠距離での射撃姿勢が必要な<スナイパーモード>では、触手の的になってしまいます!」

「問題ないわ、今までの攻撃パターンから、4本の触手のうち奴が同時に延ばせるのは2本まで。
そしてそのリーチも……どこまでも伸びるというわけではないみたいよ」

「……つまり……」

「……こういうことよ。とにかくチャージまでの時間を稼いでちょうだい!」

由美子がある作戦を耳打ちする。

「オーケー、やってみます!」

G−fixは手にしていた<デュアルロッド>を収納時より少し長い程度の長さに戻すと、
そのままそれを左腕部のアタッチメントに装着する。
この状態にした<デュアルロッド>の先端からエネルギー弾を発射する、それが<スナイパーモード>である。
ただし必要とする射程距離に比例してエネルギーのチャージに時間がかかるのが欠点だった。
G−fixはその距離と時間を稼ぐためにすぐさま敵に背を向けて走り出した。



逃げる背中を触手が追う。
やがてG−fixはある場所へと追い込まれていく。そこにはビルの外壁が待ち構えている。
あと数メートル、時間にして一秒もしないうちに、彼女を壁際に追いつめることが出来るだろう。
そこで立ち止まるか、方向を変えるにしても逃げるスピードを落とすはずだ。
その一瞬を、地中に潜めた触手で串刺しにしてやろうと「ヘレン」は待ちかまえていた。


ついにG−fixが壁際に至ると同時に、歩道のタイルを破って地中の触手が飛び出す。

G−fixもそうくることは予測していたのだろう。間一髪、地面を蹴って宙に飛ぶ。
だがその行動さえ「ヘレン」の掌の内にあった。
空中に飛び出せばますます逃げ場はなくなる。
垂直に伸びる触手で貫くことは出来なくとも、その脚を掴み地面に叩きつけてやろうか。

またジャンプの頂点で静止した瞬間を、腕の触手で外壁ごと貫いてやるのもいいだろう。



だがG−fixは、ここで「ヘレン」の予想さえしなかった行動に出た。



「!」

地面を蹴って飛び上がったG−fixは、さらにビルの外壁を蹴って逆側に飛ぶ。
空中の彼女を仕留めようと伸ばしていた腕部の触手は、彼女が蹴った後の外壁に突き刺さる。
飛翔したG−fixを追うのは、獲物を仕留めそこなった間抜けな狩人の視線だけ―――



蛸女に背を向けて壁を蹴ったG−fixはフィギュアスケートの選手のように空中で体をひねり、蛸女に向き直る。
右腕に支えられながら真っ直ぐに伸ばされた左腕は、今や一本の銃身となって正確に蛸女に狙いをつけている。

<Energy charge MAX>

「今よ、恵!」

機械音声がエネルギーの充填完了を告げ、小刻みな電子音とともにゴーグルに浮かぶ2つの照準が重なり合う。

「ファイアッ!」

充填されたエネルギーが真紅の銃弾を形成し<デュアルロッド>の先端から発射されると、
うろたえている表情の標的目掛けて一直線に飛んでいく。
その速度は、彼女に逃げ出すことすら許さなかった。

銃弾が音もなく真っ赤になった蛸女の後頭部を貫くと同時に、発射の反動により空中でさらに半回転したG−fixが
ひび割れたアスファルトの上に着地する。
その背後で、触手を身に纏った異形の怪物が断末魔を挙げる暇もなくその生命活動を終え膝から崩れ落ちた。



「やったわ!」

我が事のように由美子はガッツポーズを決めると、通信機のコードを変更し本部に連絡する。

「あ、夏目君。一丁上がりよ。至急回収班を寄越してちょうだ……えっ……!?」

モニターに表示された<EMERGENCY!>の赤い文字に、由美子は目をとめる。

「まさか……<デュナイト>がもう1体?……いえ、違うわ……この反応は……」

由美子はキーボードを素早く操り、衛星衛星が捉えた敵の画像を表示させる。
そこに映し出されたものに、彼女は絶句させられずにはおれなかった。

「そんな……これは……」


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