ハマダラカ女
ニシガハチ様 作
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秘密結社SSBの幹部・エイミーの手にかかりハマダラ蚊女へと改造されてしまった保育園の保母・安和木美奈子。
果たしてSSB・そしてエイミーは彼女を使って、どんな恐ろしい作戦を企てているのか!?



改造終了後、エイミーから指令を与えられたハマダラ蚊女は、元の美奈子の姿に戻るとSSBのアジトを後にする。
ハマダラ蚊女の去った後、SSBの紋章が大写しになった壁のモニターから「総統」の声が聞こえてくる。

「エイミーよ、新型改造装置の実験と新たな改造人間の生成は成功のようだな」

その声に反応するように、恭しく床に跪くエイミー。

「ハッ、先ほどご覧いただいたようにハマダラ蚊女、無事誕生いたしました。  
新型改造装置の方も滞りなく完成に近づいております。  
これもひとえに、首領様のお力添えのあってのこと……」

「うむ、お前の働きには期待している。それで……今回はハマダラ蚊女を使ってどのような作戦を考えているのだ?」

「ハッ、実は現在別ラインで開発中の新薬の作成に人間の血液、それも輸血用のものなどではなく  
幼い子供の新鮮な血液が大量に必要なのであります」

「なるほど……そのために保育園の保母である彼女を改造素体に選んだというわけだな」

聡明な解等に、エイミーは無言で頷く。

「……しかし、ハマダラ蚊女1人では大量の血液を集めてくるには、少々効率が悪くはないか?」

「総統」の質問に、エイミーが俯かせていた顔を上げると、そこには自信の笑みが浮かんでいた。

「ご心配なく。それを見越してハマダラ蚊女にはもう一つの能力を持たせてあります……」



―――ピンポーン

不意の訪問のベルに呼ばれた道上綾乃は、恋人が来ることになっている約束の時間にはまだ早いなと思いながらも玄関口まで出ていく。
そして覗き窓から外を覗くと、そこには彼女の同僚である安和木美奈子が立っていた。
望んでいた相手とは違ったが、親しい同僚では無下にするわけにもいかず、綾乃は何の疑いも無くかけていたドアの鍵を外して美奈子を招き入れた。

「こんばんは、綾乃先生」

「美奈子先生……どうしたんです、こんな時間に?」

知り合いの前とは言え、Tシャツにジャージのズボンというあまりにもラフな格好で出てしまったことを後悔しながら、
綾乃が一瞬しまった、という表情をメガネの奥の瞳に浮かべる。

「ええ、保育園のことでちょっとお願いが……」

「お願い?」

「お話」とか「相談」と言われたならば感じ得なかったであろう違和感に綾乃が首を傾げたその一瞬の隙をついて、
美奈子は綾乃の身体に覆いかぶさるように抱きつく。

「……ちょ、ちょっと、美奈子先生?何を?」

惑乱する綾乃とは対照的に、あくまでも態度を変えず美奈子は彼女の耳元に囁きかけるように言った。

「お願いというのはですね……綾乃先生には私の下僕になって働いてもらいたいんです」

「えっ?…………痛っ!」

美奈子の言葉に疑問を感じる暇も無く、鋭い痛みが綾乃の身体を縦に貫いた。

美奈子に抱きとめられている彼女にはわかりようもなかったが、右腕の肘から先だけハマダラ蚊女の姿に変えていた美奈子の人差し指が
細く長大な針と化して綾乃の首筋に突き立てられていたのである。

普通の人間であればそんなものを差し入れられただけでショック死しかねないほどの巨大な針管であったが、
綾乃が痛みを感じたのは最初の一瞬にすぎなかった。

「ふふふ……ちょっとチクリとするけど、すぐに気持ちよくなるわ」

「あっ……」

今や全身をハマダラ蚊女としての本来の姿へと転身させていた美奈子の言葉どおり、最初の痛みなど綾乃の神経から消え去ってしまっていた。
次いで、彼女の目に映る見慣れた部屋の光景がぐるぐると回り始める。

(ふふ……さすがはエイミー様謹製の麻酔薬。予想以上の効き目だわ)

首筋に突き立てられるとともに綾乃の体内に送り込まれた麻酔薬は、通常の蚊が血を吸う前に肌に注入する唾液を濃縮・改良したものである。
一瞬にして獲物の全身に行き渡ると、その身体から抵抗の意思と力を奪い去ってしまう。
その効果を示すかのように、美奈子の身体を払いのけようとしていた綾乃の腕がハマダラ蚊女の肌の上を力なく滑り落ちていってしまう。

「あ……あ……あぁ……」

あまりの効き目のせいか、美奈子に抱きすくめられたまま綾乃は呆けたような視線を宙にさ迷わせている。
同時に、綾乃の身体の中では痛みを感じなくなるどころか、それを通り越して今まで感じたことのない気持ちよさが湧き上がってきていた。
それは、この後彼女の部屋を訪れることになっていた彼女の恋人からもついぞ与えられたことのない、未知の感覚―――

綾乃自身は自覚するはずもなかったが、この時彼女が着用していた部屋着のジャージの股間の部分は、
水を浴びせられたように湿り気を帯び始めていた。

「うふふふ……」

ハマダラ蚊女は右手の人差し指を首筋につき立て、全身の骨を抜かれたようにすっかり脱力しきった綾乃の身体を左腕で支えてやりながら、
その乳房から生えているハマダラ蚊の脚を、それとほぼ同じ高さにある綾乃のバストにのばしていく。
部屋でくつろいでいたためか、それともこれからやってくる恋人のためか、ブラジャーなど身につけていなかった綾乃の形のよい胸を
Tシャツ越しに蹂躙していく6本のハマダラ蚊の節のある脚。
麻酔薬の副作用の1つで、快感を何倍にも増幅させられるようになっていたため、ちょっと触れただけで乳首の形がTシャツに浮き出てしまう。

「あまり遊んでる時間はないんだけど……綾乃先生は特別サービスよ」

「あぁ……あぁん………あぁ……」

何も考えられない。気持ちいい―――ただひたすらに気持ちいい。
水面に浮かぶ木切れのようにただ与えられる快楽の波に身を任せながら、本能のままに喘いでいる綾乃。
玄関の床面にはいつの間にか染みが出来ている。
だが今まさにこの時も、彼女の体内に注ぎ込まれた麻酔薬のもう一つの効果が、彼女の身体を、そして精神までも作り変えるために
働いていることに彼女自身が気づくことはなかった。

「その代わりといってはなんだけど、ちょっとだけあなたの血をいただくわね」

「あぁ……っん」

ハマダラ蚊女とともに、綾乃は切なげな声を漏らして身体を痙攣させると、
麻酔薬を送り込むために綾乃の首筋に突き立てられたハマダラ蚊女の針管が微かに赤みを帯びる。


しばしの吸血行為の後、ハマダラ蚊女は右手の針を引き抜く。
綾乃の首筋には傷跡などなく、ただ皮膚の表面が赤く腫れたように隆起しているだけだ。

「ありがとう、綾乃先生。私、この後他の先生のとこにも「お願い」に行かなくちゃいけないから、あなたの血で腹ごしらえさせてもらったわ」

ハマダラ蚊女が左手の支えを緩めると、麻酔薬と吸血行為により意識を恍惚の彼方へと飛ばされてしまっている綾乃の弛緩しきった身体が
玄関から一段高くなったキッチンの床へと沈み込み、壁に上半身を預ける。

「さてと……最後の仕上げ」

ハマダラ蚊女は、すっかり蕩けきった表情で床に座り込みいまだ荒い息遣いで胸を上下させ続けている綾乃を見下ろしながら、
背中の2枚の細長い翅を高速で羽ばたかせ始める。
と、同時に我々人間の神経に障る音の1つである、蚊の羽音が室内に響く。

「いいこと、綾乃……」

ハマダラ蚊女の奏でる羽音と彼女の言葉に反応するかのように綾乃はピクンと身体を震わせた。

「あなたの中に注ぎ込んだ麻酔薬で、あなたの身体は私と同じ蚊女へと変わる……  
だけど立場は私の方が上。この羽音を聞いたらあなたは私の下僕……私の手足として働くようになるの。いいわね?」

血を吸われて貧血気味のせいか、それとも快楽に溺れきってしまっているせいか、唇の端に涎の筋を浮かべたままの表情でただコクリと頷く綾乃。
先ほど針を抜かれたその首筋には、ハマダラ蚊の紋章がぽうっと浮かび上がっていることに彼女は気づいていない。

「それじゃ、また明日保育園で……あ、そうそう」

ドアに向かって踵を返したハマダラ蚊女だったが、くるりと首だけ綾乃の方へと振り返って言った。

「さっき、血をいただく時にあなたの意識を読み取らせてもらったけど、これから恋人が来るのね。
 じゃあ、私に吸われて足りない分はその彼からいただいちゃいなさい」

「……ハイ」

恋人の血を吸うところを想像してなのか、綾乃は微かに笑みを浮かべながらハマダラ蚊女に返事をし、
ハマダラ蚊女もそれを聞き取ると満足そうな表情で綾乃の部屋を後にした。



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