男児の血を吸うと同時に麻酔兼怪人化液とともに付け爪に仕込まれた
『SSB』の最新技術が体内へと注入されているのだ。
「う、うう…。何するんだよぉ。ゾクゾクするよぉ…」
「どんな感じで変化するかは私も知らないのよ。 じっくりと私を楽しませてねえ、ボクぅ」
するとハマダラ蚊女は保母に命じて男児を降ろさせると体育館の冷たい床に寝かされ
男児はうずくまって震えてしまっている。
だが、彼を助ける者は一人もいない。
保母達はもちろん、残っている園児達はハマダラ蚊女に怯えて泣いているだけで
親しかった友達も誰も彼を助けてはくれない。
「ひゃあ!何か変だよぉ!何なんだよぉ…」
「始まったようね。あなたには麻酔は少なめにしておいたから
気を失う事無く変化していく様子を見させてもらうわよぉ」
「あ、熱い!あっついよぉ!」
急激に熱くなった股間に男児は両手で抑えて熱さを忘れようとするが
一向に収まらず、柔らかな皮膚にはじわじわと汗が流れていく。
その熱さは男児にとって決して気持ちのいい熱さなどではなく
風邪や流行病の際の急激な体温上昇のようなものであったために
股間を中心とはいえ苦しいものといえた。
「ふうん、やっぱりアレの形成はお子様にとっては苦痛に近いようね」
「まだ成長していない身体ですから痛みは無いだろうというのが
エイミー様の予測でしたが…」
「まあ、あの子の場合はわざと麻酔を少なくしたからというのも
あるでしょうけどね。他の子達には通常通りの麻酔の量にした方が良さそうね。
ちょっとつまんないけど」
男児の苦しむ様を冷静に分析しているハマダラ蚊女達。
正しくそれは悪魔の実験といえた。
「はぁはぁはぁ。熱いのが無くなった…。ぼ、僕どうなっちゃうのぉ」
「うふふ、君は私の可愛いモスキートチルドレンになる。
それだけのことでまずはその過程でしかないのよ。
ねえ、ちょっと確認してもらえる?」
「はっ!かしこまりましたハマダラ蚊女様」
命令を受けた戦闘員はぐったりとした男児の元まで近づくと両手を無理やり股間から離して
下着の上からだが幼い男性器の下の部分をゆっくりと慎重に触り
形成された『何か』を確認すると、すぐにその場で立ち上がり敬礼し報告を行った。
「未熟ではありますが女性器が形成されています。
当初の予定通り男児の半陰陽化は完了です」
「わかったわ。流石はエイミー様の作った強制性転換細胞ね。
これでこの子は成長していくにつれて完全な女性へとなっていく…。
なんて素晴らしいのかしらぁ。そして私は男も女も下僕に出来るようになるのねえ」
「はい。ですが今の強制性転換細胞では体が未発達の男児しか対象には 出来ないとの事です。年齢を関係無く使えるようになるには
まだまだ改良が…」
「あら、わかってるわよ。でも成長しきった男やジジイの血を吸うのは嫌だから
今のままでも私は満足してるんだけど、SSBのためなら…ね」
などと会話していると男児に新たな変化が起きる。
「背中が、ムズムズムズムズする…。痛いよ…痛いよぉ…」
背中を丸めて震えだした男児、麻酔があまり投与されていないために
先程の女児達のように楽に変化される事は許されず
身体に新たな部位が無理やり形成されていく苦痛を味わっているのだ。
怪人化液の効果が強制性転換細胞の初期効能が落ち着いてきたところで
出始めた事で、ハマダラ蚊女の下僕の証といえる羽が男児の背中に 生えようとしている。
「さぁて、君はもうまもなく私の下僕となり抵抗も反抗も許されない。
どんな気分かしら?」
「うう…。き、きっと正義の味方がやっつけてくれるんだ!あぐぁぁ!!」
「我等SSBに歯向かう愚か者なんて見て見たいものねぇ。
さ〜あ、もうすぐ、もうすぐよぉ…」
背中から羽が生えてきているのがよくわかるように衣服が盛り上がっている。
下僕化の象徴の羽が飛び出るために衣服を無理やり破って出て来ようとしており
生地の強度の限界なのか小さい小さい切れ目が少しずつ見え出した、その時。
「う、う、うわぁぁぁっ!!」
男児の叫びとともに透き通った2枚の羽が衣服を破ってその姿を現した。
すると男児はゆっくりと立ち上がるとハマダラ蚊女の前まで歩き
他の女児達と同様、直立不動で立ち尽くしていた。
勇気を出し、そして涙を流したその純朴な瞳は光を失ってしまい
心や意識は完全にハマダラ蚊女の支配下へと置かれてしまったのだった。
「うふふ…。君は無謀にも私に反抗してくれたわね?」
「はい…。ごめんなさい…ハマダラ蚊女様…」
「素直に謝れたから許してあげる。その代わり次に血を吸う子は君が
一番親しいお友達よ。その子をあなたが連れて来るのよ」
「はい。わかりました…」
命令のままに返事をした男児は残った園児達の中からそのうちの一人を無理やり連れて来ると
ハマダラ蚊女の前に差し出した。
「連れて来ました、ハマダラ蚊女様…」
「よろしい。さあ君も後ろに並びなさい」
「わかりました…」
「うふふ…。お友達に連れて来られた気持ちはどう?」
「うえっ、えぐ、友達なのにヒドイよぉ…。なんでだよぉ…」
「その気持ち、悲しみ、憎しみは力になる…覚えておくのよ。
さあ、君も私の下僕になりなさい」
やがて、ハマダラ蚊女の後ろには変身を終えてハマダラ蚊女となった保母達を
先頭に『モスキートチルドレン』へと改造された園児達が微動だにせず並んでいた。
全園児の改造終了後に着替えさせたのか黒のブーツとグローブ、それに
茶色のボディースーツを身に纏い、背中からは小さな羽が出るようにわずかな
切り込みがあるようでそこから羽が露出している。 ハマダラ蚊女の支配下にある今、幼い皮膚に貼りつくボディスーツの布地には
何の違和感も感じずに躊躇せずに着替えたのだろう。
幼い園児達はまだ完全なハマダラ蚊女に変身は出来ない。
肉体が成長していくにつれて徐々にハマダラ蚊女へとなるのだ。
今のコスチュームは『モスキートチルドレン』となった証である。
そしてハマダラ蚊女の前には戦闘員が大型のテレビカメラを持って
作戦成功の報告を行うための準備を済ましており、後はプロフェッサー・エイミーへの
報告をもってこの実験を兼ねた作戦は完了といえた。
「ハマダラ蚊女様!まもなくエイミー様との回線が繋がります」
「わかったわ。アナタも今回はご苦労様」
「は、はい!お褒めのお言葉ありがとうございます!!」
微笑を浮かべ戦闘員に言葉をかけたハマダラ蚊女だったが
エイミーとの回線が安定し始めた証拠の雑音がスピーカーから聞こえ出すと
表情は一変して厳しくなっていた。
「……ご苦労様ハマダラ蚊女。こちらに送られている映像を見る限りは成功のようね?」
「はい。保母や女児達の羽の発現、強制性転換細胞による男児の半陰陽化と改造の成功と
全て成功です。これもSSBの科学力を持ってこそかと…」
「そうね、でも強制性転換細胞の効果の確認をしたいから何人か連れて来てくれる?
体型なんかも若干違った方がサンプルとして価値があるわ」
「かしこまりました。ではこちらで選別して私とともにエイミー様の元へと
連れて行きます」
「ん、ありがと。じゃあ後は予定通りウチから新しい園長を派遣するから
保母や園児達の記憶の修正をよろしくね。園児の家族、特に男児の家族への対処は
何か考えるとしましょう。しばらくは体の変化に気づく事は無いでしょうし」
「はい、今は微々たる変化ですから愚かな親達は気づきはしないかと…」
「ふふ、元保母のあなたの言葉だから信じるに値するわね。
さてと、私は検査の準備をするから報告はここまで。じゃね」
「はっ!全てはSSBのために!!」
「「全てはSSBのために!!」」
ハマダラ蚊女と同時に宣誓を行う保母や『モスキートチルドレン』。
その様は完全にハマダラ蚊女、そしてSSBの支配下となった証拠といえた。
報告を終えるとそそくさと機材の片付けを始めた戦闘員をよそに
ハマダラ蚊女は男児の中からサンプルの選別を始めている。
より強力な能力を不完全ながら得たハマダラ蚊女はSSBのためにより一層働くのだろう。
そしてSSBは世界の闇の中で着々と暗躍していくのだった。
END |