ハマダラカ女6
妄想狐様 作
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 アキは研究所に入るといつも通りに仕事をサボっていた男性所員を捕まえる。
「ああ、ちょうど良かった。大久保さん、みんなを会議室に集めて頂戴。」
アキは大久保という男性所員に指示を出す、大久保はよれよれのシャツにボサボサの髪、口には爪楊枝をくわえていた。特に知識も技術も無い凡庸な男、アキとっては“典型的な嫌なオヤジ”だった。
「えぇっ・・・今、手が離せないんですよ。それに後の方は?ここは関係者以外立入禁止のはずなんですがねぇ、森田主任んぅ。」
大久保は明らかにサボっていたがそのことを隠そうともせず、逆にアキに絡んできた。アキの後ろから美奈子が囁く。
「ねぇ、まさかと思うけどこれが少数精鋭?」
「違いますよ、これはその他大勢のカスですよ。」
アキも小声で美奈子に返事をする。
「んんっ、なにをコソコソ話してるんですかぁ?」
両手を白衣のポケットに入れて引き続き絡んでくる大久保、
「こちらの方は大切なお客様です、早くみんなを会議室に集めなさい。」
段々とイラついてきた所為でアキの口調が厳しくなる。
「チッ、ちょっと若くて主任になったからって・・・偉そうにしやがって!どうせ主任の地位だって教授におねだりしたんだろう?それとも一晩やったか?」
あまりの暴言についにキレた、ただしアキではなく美奈子が。
「それくらいになさい、このカスが!」
美奈子の背中から薄い羽が現れ、人間の可聴音域を越える催眠音波を発する。
「な、なんだ。その羽・・・ぐぁっ・ギッ・・・グァァ。」
両手で耳を押さえる大久保、だが時既に遅く10秒後には美奈子の催眠音波によって自我を失っていた。
「ふんっ、人間の分際で私の下僕に歯向かうからよ。すぐにアキの命令に従いなさい。5分後に全員会議室よ。」
自我を失った大久保はコクリと頷くと、各所員達を集めに行った。
「あ、ありがとうございます。」
ペコリと頭を下げるアキ、
「いいのよ、それよりここではどんな研究をしていたの?」
アキの頭を撫でながら美奈子が尋ねる。
「ここでは遺伝子の合成実験や、キメラウィルスの研究をしていました。」
「合成実験とキメラウィルスねぇ、ここって国の機関だったわよね。」
「はい、一応国立研究所ですが、なにか?」
美奈子の顔を見ながらアキが答える。
「このまま放置しておくのには危険な存在ね、この際だから消したほうがSSBの為になりそうね。」
会議室に向かいながら美奈子とアキの会話は続く。
「私もそう思います、遺伝子やDNAを扱っていいのは私達SSBだけです、下衆な人間共が扱っていいものではありません。」
「それじゃこの施設は処分しましょう。でも騒ぎが大きくなりませんか?」
「そのためにもなるみと美樹がいるんじゃない、警察内部で情報操作しちゃえばマスコミだって押さえられるわ。」
「そうですね、それでは必要な二人を除いてあとは処分ですね。」
美奈子の達した結論はこの施設と人員の抹殺だった。
会議室で待っているとぞろぞろと全所員達が集まってきた。美奈子とアキ、それに全所員が入ると会議室内は一杯になった。全員が揃った事を確認して美奈子とアキは会議室唯一つの出入り口を背に立った。
「主任、大久保君に呼ばれましたが一体何なんですか?」
不満そうな表情の男性所員、殆どの男性所員はこの所員と同じ様な不満を持っているらしかった、口々に不満を漏らすため会議室内がざわつき始める。
「おい、大久保!何だってんだ一体。」
この場所に全員を集めた大久保に先程の所員が詰め寄った、ガクガクと揺さぶられたことと、美奈子の催眠音波の効果が切れたことで大久保の意識が戻る。
「え?あ?・・・どうして・・・」
自分でも訳が分からない大久保、余計に所員がざわめく。
「あのぉ主任、そちらの女性は?」
ざわめきの中から一人の女性所員が手を上げて質問する。
「こちらの方はハマダラ蚊女様よ。そして私はその下僕にしていただいたの。」
「はぁ?」
突然聞いた事の無い単語が出てきたことに驚く女性所員、他の所員も驚いたようでざわついていた室内はシンと静まり返る。その沈黙を破ったのは先程最初に不満を漏らした男性所員だった。
「な、なにを言ってるんですか。主任のしょうもないカミングアウトに付き合ってる暇は無いんですよ、そこの女性とSMでも何でも勝手に楽しんでいてください。」
そう言い放ち男性職員は部屋から出ようと美奈子とアキに向かってきた。
「勝手な行動は許さないわ、下衆共。」
美奈子はそう言うと、次の瞬間本来の姿であるハマダラ蚊女の姿になる。額から伸びる触角、胸の副腕、背中の薄い羽、特撮以外で初めて見る人外の者に言葉を無くし呆然と立ち尽くす所員達。
「う、うぁぁ、化け物ぉ。」
最初に叫び声を上げたのは正気に戻った大久保だった、
「ハマダラ蚊女様を化け物だなんて、下衆な人間の分際で!」
美奈子に続いてアキも未成熟ながらハマダラ蚊女の姿になる。
「そしてこれが私の本当の姿、今の私はSSBのエージェント、そしてハマダラ蚊女様の下僕、モスキート・アキ。」
自慢気なアキ、その場でフワリと浮くと優雅に一回転する。
「きゃぁぁ、しゅ、主任まで・・・」
女性職員が絶叫する、そしてそのまま倒れこんでしまった。
「あら、百合香さん失神しちゃったのね。」
アキは床に倒れた百合香を眺めながら呟いた。その途端、室内は大パニックに陥った。あるものは泣き叫び、そしてあるものは半狂乱の状態になりアキ達から逃げようと部屋の片隅に後退りをする。そんな中、無謀にも大久保が椅子を振り上げアキに向かって行った。
「このっ、化け物めぇっ死ねぇぇぇ。」
渾身の力を込めてアキの頭上に振り下ろそうとした、しかしその腕は振り下ろされる事は無かった。大久保の身体は椅子を持ち上げたままの状態で硬直している。
そして「ゴロン」と言う音と共に何かが床を転がった。
「ふんっ、下衆が私達に歯向かうからよ。」
そう吐き捨てるアキ。アキの指先からは鋭い爪が伸び、その爪が大久保の首を飛ばしていた。先程床に転がった何か、それは大久保の頭だった。大久保の身体は頭を失ったまま仁王立ちにのまま首から鮮血を噴出していた。
「うぐっ、まっず〜い。」
爪に付いた大久保のまだ温かい血液を舐めたアキの素直な感想だった。
「止めときなさいモスキート・アキ。そんなの無理して飲む事無いわよ。」
無邪気に微笑みながら話すハマダラ蚊女。
「うぅ、人間がカスだと血液までカスなんだ・・・マズイよぉ。」
ぺっぺと大久保の血液を吐きながら顔をしかめるアキ。
「そんなカスの血、無理して飲まなくて良いわ。もっと上質な血の匂いがしてるでしょ。」
ハマダラ蚊女の言葉に頷くアキ、二人は視線を絡ませると次に部屋の片隅に固まる研究所員達に向ける。
「さてと・・・モスキート・アキ、まずは邪魔な男共を処分しましょうか。」
ニコリと微笑むハマダラ蚊女、
「はい、まずはカス共の処分ですね。」
ニコリと微笑み返すアキ、そして会議室内に悲鳴と絶叫が響き渡った。そして始まった殺戮・虐殺とも呼べない一方的な殺人遊戯、3分後・・・この部屋の内装は一変していた白い壁と薄いクリーム色の床は全く違う色に塗り替えられていた。その色は赤、それも鮮やかな深紅に、生命の雫がこの部屋一面に広がり天井から滴っていた。様変わりした室内で動くものが四つ、二つは返り血を浴び佇むハマダラ蚊女とモスキート・アキ。そして放心して部屋の片隅で震える一人の女子所員、そして最初に失神して床に転がったままの百合香だった。その他は・・・
人間の形をとどめているのが八つと、なんだか良く分からない肉塊が沢山転がっていた。その一つを黒いブーツのように変形した爪先で突きながら、ハマダラ蚊女がもらした。
「これだけいたのにまともな血の持ち主は無しか・・・」
「ここまでカス揃いだとは思ってませんでした、あぁこんな奴等と同じ職場で同じ空気を吸っていたなんて、虫唾が走ります。」
今のアキにとっては人間は、自分に血を供給する家畜か低脳な実験動物としかうつっていなかった。
「でも、美味しそうな血の持ち主もいるみたいじゃない。」
ガタガタ震える女子所員を見るハマダラ蚊女、その指先は既に鋭く伸びて長大な黒い針に変化していた。
「どうぞ、ハマダラ蚊女様。美味しそうな血の匂いが漂ってます、それにその二人は有能な人材ですからSSBにとっても有益だと思いますよ。」
ハマダラ蚊女は長く細い針状に変化した指先を一舐めして、震える女性に迫っていく。常識を超えた異常な惨劇を目にしてしまった女性は、腰を抜かし全く動けなくてしまっていた。
「怖がる事は無いわよ・・・最初はチクッとするけどね、スグに気持ち良くなるわ。」
優しく語り掛けるハマダラ蚊女、その後ろからヒョコッと顔を出すアキ。
「そう、とっても気持ち良いのよ凛さん。早く貴方達もハマダラ蚊女様の下僕にして頂きなさい。」



凛と呼ばれた女性は、腰まである黒髪を三つ網にしていた。凛は逃げ出すことはおろか立ち上がることも出来ずへたり込んでいる。
「いやぁ、助けて・・・主任。」
「あなた前に言っていたじゃない、“今の人間は進化することを放棄している。進化するためにも、もっと自由で実用的な実験がしたい”って。」
「あれは・・・あれは違うんです。」
「違わないわ、これこそが人類の進化よ。この姿こそがあなたの望んだ進化した姿なの、あなたはその一人に選ばれた、とても光栄なことよ。」
首を横に振る凛、その様子は怯える子羊の様だった。
「うふふ、その怯える表情もたまらないわね、凛さん貴方から頂くわ。」
ハマダラ蚊女はその女性の前にしゃがみ込むと腰が抜け身動きの取れない女性の首筋に鋭く黒光りする指先を突き立てた。
「あ、あぁ・・・いやぁ・・・」
搾り出すように声を出す凛、だがハマダラ蚊女から送り込まれた麻酔薬が痛みを消し去り、代わりに言いようの無い快感を送り込む。
「うっ・・・あ、あぁぁ・・・いやぁ。へん、へんなの。」
その光景をアキは自分の事の様に、嬉しそうに見詰めていた。
「あぁ・・・いやぁ・・・いい、良いよぉ。もっと・・・もっとぉ。」
凛の声が艶を帯びたものに変わってくる、その様子を確認したハマダラ蚊女は凛を抱かかえ意識改変剤と怪人化液を注入した。
「あぁ、なにかが・・・入ってくるぅ・・・私の中・・・」
視線を泳がせながらうわ言の様に話す凛、
「変えて頂きなさい、低俗な人間からハマダラ蚊女様の下僕へ。」
意識改変剤が凛の脳から人間としての意識を消し去り、代りにハマダラ蚊女としての意識を構築していく。
「あぁ・・・ハマダラ蚊女様ぁ。」
凛の中でハマダラ蚊女を主人として認めた結果の言葉だった。そしてその言葉の後、凛の意識は一旦堕ちてしまった。ハマダラ蚊女の腕の中で心地良さそうに眠る凛。
「凛、ちょっと待っていなさいね。」
ハマダラ蚊女は凛の首筋から針状の指を引き抜くと優しく床に寝かせる声を掛けると、失神したまま床に転がる百合香の傍へ移動した。
「う〜ん、意識が無い状態っていうのもつまらないわね。」
両手でしっかり百合香を抱かかえると、背中の羽を少し震わせて百合香の意識を覚醒させた。
「き、きゃぁぁ・・・なに・・・なんなの。」
目を覚ますと同時に大絶叫をする百合香、
「っつと・・・元気があっていいわね。でも少し大人しくしてくれるかしら?」
ハマダラ蚊女は不意に百合香の唇を奪う、恐怖の絶叫から今度は正体不明な者に
唇を奪われるという、大混乱に陥る百合香。
「むぐっ・・・むぅぅ。」
目を白黒させながら必死にもがく、だがハマダラ蚊女にしっかりと抱かれている
のでどうすることも出来ない。更にハマダラ蚊女の胸から生える副腕が百合香の胸を弄る。暫く口付けした後ハマダラ蚊女がやっと百合香の唇を解放した。
「プハッ・・・この子の唇、柔らかくって美味しかった。」
しっかりと百合香の唇を堪能したハマダラ蚊女は満足した様子で唇を拭う、
「私の唾液にも針と同じ麻酔液の効果があるから、もう夢見心地でしょ。」
ハマダラ蚊女の言葉通り、百合香の目は虚ろで呼吸も少し乱れ始めていた。
「はぅぅ・・・き、気持ちぃぃ。もっとぉもっとぉ・・・してくださぁぃ。」
「して欲しいのね、それならしてあげるわ。このハマダラ蚊女の下僕にね。」
ハマダラ蚊女はゆっくりと百合香の首筋にその黒い針を突き刺す。
「うん、やっぱりこの子の血が一番ね。モスキート・アキ貴方も飲んでみる?」
「よろしいのですか?」
そう良いながらもアキの指先は針状になり、百合香の頬を撫でていた。
「良いわよ、でもあんまり吸い過ぎて殺しちゃ駄目よ。」
「わかりました、ではいただきま〜す。」
ハマダラ蚊女が針を突き刺している反対側の首筋に、アキがもう一本の針を突き立てた。
「あうっ・・・つ〜ぅっ・・・あふぅ。」



二本の針に貫かれ、血を吸われながらも快感に浸る百合香。アキの指先の針からもハマダラ蚊女と同じ麻酔液が注入される、通常の2倍の麻酔薬を注入された百合香。無論その副作用、性感の鋭敏化も2倍になり百合香を襲う。身をよじる度にブラジャーと硬くなった乳首が擦れ合う感触が、既に湿り気を通り越し濡れそぼった秘部の中で秘肉同士が擦れ合う感触が、更に普段はなんともない衣服と肌が擦れる感触が、百合香の全身を激しく愛撫してくる。その快感は常人が許容できるギリギリのラインだった。
「ひぃ・・・ひぃぃぃぃ・・・すごっ・・・すごいぃぃぃ。」
全身を微かに痙攣させながら喘ぐ百合香、その瞳は虚ろで澱んだ光を湛えていた。
「さぁ、貴方にも怪人化液を注入してあげるわ、快感の中で私の下僕にしてあげる。」
ハマダラ蚊女から意識改変剤と怪人化液が百合香の中に注ぎ込まれる。
「ひぁぁぁ、ひっ・・・は、入って・・・入ってくるぅぅぅ。」
大きく身体を痙攣させ嬌声を上げる百合香、だらしなく開いた口元からは一筋の光る筋が滴っていた。
「そう、入ってくるでしょ百合香。それがあなたに更なる進化を与えてくれるの、私と同じハマダラ蚊女様の下僕に・・・」
そう言うとアキは指先の針をゆっくりと抜き取った。
「さぁ、これで終了ね。」
ぐったりと全身の筋肉を弛緩させた百合香を寝かせると、ハマダラ蚊女は背中の羽を震わせ人間には聞こえない、しかしハマダラ蚊女とその下僕にはしっかりと聞こえる羽音でたった今誕生したばかりの新たな下僕を覚醒させた。凛と百合香はゆっくりと立ち上がる、その首筋にはハマダラ蚊女の紋章が浮かび上がっていた。
「凛、百合香、気分はどうかしら?」
そう尋ねるハマダラ蚊女に対して、虚ろな瞳のままの二人が声を揃えて返事をする。
「とても良い気分です、ハマダラ蚊女様。」
「それは良かったわ、では貴方達は一体何者?」
「私たちはハマダラ蚊女様の下僕です。」
「あなた達の喜びは?」
「SSBとハマダラ蚊女様に全てを捧げることです。」
その返事に満足したハマダラ蚊女はにっこりと微笑む、
「全てはSSBの為に!」
ハマダラ蚊女が宣誓すると、アキ・凛・百合香の三人も声を揃えて宣誓する。
「ハイ、ハマダラ蚊女様。全てはSSBの為に。」
こうして優秀な下僕を手に入れたハマダラ蚊女は意気揚々とあけち保育園へと引き上げて行った。

翌日の朝刊各誌にこんな記事が掲載されていた。
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『国立遺伝子研究所で爆発事故発生所員15名全員が犠牲』
 X日午前10時ごろ、国立遺伝子研究所内で大規模な爆発事故が発生。その後
発生した火災は瞬く間に研究所内に広がり、研究所主任の○○アキさん(28)
をはじめとする研究所員15名全員が犠牲となった。なお警察では爆発火災の原
因を実験中、何らかの理由で薬品が科学反応を起こし爆発した事故と見て消防と
共に現場検証を進めている。なお爆発の規模が大きく周辺施設への被害も多数出
ている模様。同研究所施設は爆発の衝撃とその後の火災で全壊しており、遺体の
多くが激しく損傷しており身元の特定は困難を極めたが現場の状況から所内にい
た研究所員は全員の生存が絶望視されている。現場周辺では残留薬品の危険性か
ら現在も半径100m圏内は立入禁止となっている。
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と・・・

【 END 】

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